肩羽は語る - 高橋伸夫 |
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「肩羽」(scapulars)とは人間でいえば肩甲骨のあたりに生える羽根で、大きく分けると片側2列あり、背骨に近い列を「上肩羽」、遠い列を「下肩羽」と呼ぶ。シギなど肩羽が発達しているものの下肩羽は更に2列に分かれ、上肩羽は明確に分けられないが2〜3列に見える。肩羽は体の前にあるものを上にして重なり、1枚の大きさは概ね後ろへいくほど大きい。したがって一枚の羽根が比較的大きい下肩羽では、「上列下肩羽」、「下列下肩羽」。さらにはその位置により「上列前部下肩羽」、「上列後部下肩羽」などと称して、その1枚の羽根の模様を説明する場合もある。肩羽は「襟」(mantle)や「三列風切」(tertials)とともに、大切な体や翼を雨や日差しから護る役目をしている。特に襟と肩羽は体の上面を覆うことで、雨粒を翼の外側へ排出する大切な機能をもっている。また、砂漠や海岸、水辺など、日差しの強い場所に生息する鳥の多くは、肩羽とともに三列風切も発達しており、肩羽で「雨覆」(coverts)を、三列風切で「初列風切」(primary)をと、飛翔のために重要な羽根を紫外線から護る役割を担っている。これらの羽根は飛ぶための役割はほとんど果たさず、飛翔時は体に張り付いて飛行を妨げぬようにしている。ちなみに1枚の羽根を作ることは、普通1年に最低1回は全ての羽根を更新しなければならない鳥にとって、かなり大きな負担なのである。体の大きな鳥は、相応の強度を備えたものを作らなければならない。したがって大型のシギの仲間、比較的低緯度で繁殖するカモメの仲間などでは、肩羽や三列風切を発達させるのではなく、雨覆や風切をメラニン色素などで補強しているケースも多い。いずれにせよ、こうした機能が発達しているのは、年中雨や日差しに晒されている鳥である。木陰や岩陰、巣穴などで休息できる鳥には顕著な発達がみられない。 ![]() 冬のカモの美しさ。タヒバリとムネアカタヒバリの識別。神の創造を疑わせぬオオハムの背の格子模様。鳥を楽しむために、肩羽の役割は限りなく大きい。 肩羽の発達した鳥は、これを単に蓑としては使っていない。磨耗の激しいこの羽根は1年に2度生え変わる。1度はきれいな夏羽に、もう1度は迷彩用の冬羽である。シギやチドリの場合、そのきれいな夏羽も、実は「極北の夏の迷彩色」であると明記した文献を未だ目にしたことがない(ロシア語が読めないこともある)が、近年触れる機会の増えたシベリアのカラー写真集を幾つか見れば、シベリアオオハシシギ、トウネン、ヨーロッパトウネン、ムナグロ、タイゼン、オバシギ、コオバシギ、ハマシギ、サルハマシギ、そして憧れのヘラシギなどなど、それぞれの繁殖場所の環境が目に浮かぶようだ。と言ったら「また高橋の大ホラ吹きが始まった」と一笑に付されてしまうだろうか? オーストラリア、カナダ、ヨーロッパ。決して悪い所ではない。しかし、私が今一番行きたい場所は、6月から7月にかけての北シベリアなのだ。 contents | ||